約11年前
カリフォルニアで行われた
TEDで講演しました
大成功でした
「明日 世界が滅亡する10の可能性」
という演題でした
それは拡散し
ネットで様々なことが
拡散するようになる前でしたが―
良いことばかりではありませんでした
何千ものばかげたサイトで
紹介されました
『メン・イン・ブラック』を
記録映画と考えるような人たちのサイトで
(笑)
彼らは実際に
マヤ暦が終末を予言したと
信じていました
その講演の前に私のことを
検索していたら
9件か10件ヒットしたでしょう
科学誌の編集者としてです
それが講演の3週間後には
418件になりました
火星人と関連づけられて
偶然にも
そのとき私は母にパソコンの
使い方を教えていました
(笑)
しかも遠隔でです
グーグルの使い方も教えました
母が初めて検索したのは
誰だったでしょう
(笑)
ですから
(笑)
[「スティーヴ、大丈夫?」]
自分の評判が少し心配になり始めました
そこでTEDキュレーターの
クリス・アンダーソンに電話しました
私はクリスなら TEDの講演者が
頭のおかしいネット民に
同類扱いされることを望まず
Googleのお友達
ラリーとセルゲイに手を回して
抹消に協力してくれると思っていました
少し失望しました
[「お気の毒に」]
私が求めていたような同情は
得られませんでした
クリスはこれを面白いと
考えたようです
またTEDで話してくれと頼まれ
私は贖罪の機会だと思って
飛びつきました
今度は「楽観的な未来になる10の理由」
というお題で話し
とても良い講演になりました
これまでで一番でした
驚きと興味深い科学が満載の
講演だったのですが
それほど広まりませんでした
人々は 世界が突如滅亡する
新たな10の可能性を求めていたのです
[「どうしてやらなかったんだい?
温暖化の話は?」]
誰も楽観的な講演など
シェアしなかったのでした
で マイクとリンダから
TEDxでの講演を頼まれたとき
あれから何年も経っていたので
私にはたくさんの
良いアイディアがありました
しかし彼らが何を求めたと
思いますか?
[明日世界が滅亡する8つの可能性]
それが 世界滅亡説の権威として
私がお送りする 今日のお話です
それでは2013年版カウントダウンを
始めましょう
[第8位 パンデミックの襲来]
これは新型インフルエンザN1H1です
このインフルエンザ・ウイルスが
直近のパンデミック つまり
1918年のスペイン風邪の元凶です
当時の世界人口の5割
すなわち10億人が感染し
10人に1人が死んだと
見られています
[5億人感染 1億人死亡]
興味深いのは それが
3波に分かれて押し寄せ
それぞれ6か月間隔があいたことです
第2波では感染した全員が死にました
インフルエンザは
それほど恐ろしいのです
2013年の現在
中国の農家の庭先でアヒルや豚や鶏が
密集して飼われています
そこでインフルエンザが発生します
ウイルスは突然変異が得意です
こうした農家ではなおさらです
したがって毎年予防注射を受け
身を守らねばなりません
ただ 興味深いことに
アメリカでは国民の半分未満しか
毎年予防接種を受けていません
でも疾病予防管理センターが
心配で夜も眠れないのはそのせいではなく
彼らが懸念しているのは
遺伝子組み換えウイルスです
それをご説明します
ウイルスには2種類あります
一つは動物に感染するウイルスで
動物から動物へとうつります
もう一つは人間に感染するウイルスで
人から人へと感染します
香港型インフルエンザや
2009年に再発したH1N1型
インフルエンザに感染した人が
市場に行って鶏肉を買い
それがたまたま
ウイルスに感染しており
家で正しく調理せずに
食べると そのウイルスにも感染します
つまり2種類のウイルスに
感染したわけです
人から人へ感染するウイルスと
動物から動物へ感染するウイルスです
しかしほとんどの場合
動物ウイルスのほうが
毒性が強く危険です
さらに 数週間前
H7N9(鳥インフルエンザ)と呼ばれる
致命的なインフルエンザが現れました
約100人が感染し
その多くが亡くなりました
疾病予防管理センターの
最大の懸念の一つです
スペイン風邪のようなパンデミックが
新たに起こり得ます
ある人が
人に感染するウイルスを保有していて
ウイルス入りの肉を
食べてしまった場合などです
そういった場合も解決策はあります
しかし状況は1918年当時と
とても異なります
8万機の商用ジェット機が
満員の乗客を乗せて毎日飛んでいます
ウイルスが地球を1周するのに
かかるのは約2週間です
民間企業ではそんなに早く
ワクチンを供給できません
私たちにできる唯一の方法は
オーストラリア政府がしたように
試験所を造り
即座に
大量のワクチンを製造できるよう
準備することです
それをしなければなりません
第2に 手軽な試験紙検査が必要です
薬局に行き綿棒を買って
それを口に入れます
青く染まれば感染しています
医者にかかって「私はインフルエンザですか」
「細菌感染症ですか」などと尋ねても
うち半分のケースでは医者にもわかりません
パンデミックが来て インフルエンザに
かかっているか知りたくても
医者を見つけることはできないのです
第3に 予算を割いて公共医療制度を
充実させる必要があります
現実には5万人の公共医療従事者が
過去3年間に解雇されました
40年から50年前
この国に何千もの核シェルターが
建設されました
核戦争が現実の脅威になると
考えられていたからです
それが造れたのだから
公共医療制度も作れます
そうすればパンデミックにも
対応できます
次は7番目です
(拍手)
美しいでしょう?
太陽からのコロナ質量放出です
これに比べれば太陽フレアは
幼稚園のようなものです
[第7位 太陽活動の活発化]
それにより無数の原子が
微粒子として放出され
放射線とともに宇宙に飛び出します
このような爆発のほとんどは
地球を直撃しません
太陽とは 宇宙にただよう
巨大なビーチボールのようなもので
地球は講堂の隅っこに転がっている
BB弾のようなものだからです
ですから太陽が
どの方向へ微粒子を放出しようと
私たちに直接ぶつかることは
非常にまれです
しかし昨年8月 そして1か月前にも
衝突が起きました
そのとき飛行機に乗っていたかったとは
誰も思わなかったでしょう
1859年のコロナ質量放出では
アメリカのできたばかりの電報システムが
融けたも同然の惨状を呈しました
システムが発火し
オペレーターはショックを受け
電報は消失しました
多くの場合 大気中の磁場が
私たちをコロナ質量放出から守ります
しかし大規模な直接衝突が起こったら
世界中の全送電網と
全人工衛星が一瞬で破壊され
世界は まるで19世紀に逆戻りした状態に
なってしまうでしょう
送電網の半分を回復するのに
20年かかるでしょう
バックアップがないからです
電気のない生活を考えてみてください
ほとんどの都市には
住めなくなってしまうでしょう
私たちは地上80階以上の高層ビルに
地下2階までしか作りません
ビルの地下には安全地帯を
設ける必要があります
地上80階ごとに
地下8階まで作るべきであり
これを新たな建築基準として
義務化すべきです
ニュージャージー州は州内2万か所の
橋を再建しています
東海岸で大震災が
早晩起こると見ているからです
それができるなら 私たちも
独自の建築基準を持てるはずです
また 変圧器や電線が
脆弱で摩耗しやすい消耗品だと認識し
強化された地下発電所を設置し
非常時に備えねばなりません
[第6位 新たな生命の形の開発]
これはクレイグ・ヴェンター研究所が
発明した合成ゲノムです
それを細菌細胞に注入し
「新しい生命の形」を創り出したのです
過去に存在しなかった生命の形で
繁殖も可能です
3年前に行われたこの実験の
目的は立派です
単一の細胞から何でも
望むものを作るというものです
決まった物質を注入することで
望みのものを取り出せるのです
例えば合成ワクチンを作ったり
二酸化炭素を燃料に変えたりできます
その問題点は何でしょう
私たちの歴史は汚点だらけです
安全な研究室から有害なものが流出したとか
自然を改変しようとして
手に負えない事態になったとか
あるローテクの例を挙げれば
土壌浸食を食い止めるため
私たちは日本から輸入した葛を植えました
でも うまくいきませんでした
一方では 世界中の研究所が
バイオテクノロジーの実験を
想像を超える方法で行っています
金髪碧眼 性別男の完璧な赤ちゃんを
試験管内で創り出すこともできます
遺伝子組み換えトウモロコシも作れますし
何でも自由自在です
遺伝子組み換えトウモロコシが
人間を飢餓から救ってくれているかというと
私はむしろ 野生のトウモロコシに対する
脅威と捉えています
今やメキシコにしか自生していません
対策の1つ目は
「目を光らせ さらに規制すること」
この広い新世界全体を統治・規制する
単一の政府や法律は存在しません
ばらばらな規制があるだけです
食品医薬品局や
農業省や
環境保護庁所管の規制です
この現状に秩序をもたらす
新しい単一の政府機関が必要です
その間にも 監視の届かないところで
この分野への参入が絶えず起こっており
素人もそれに続くでしょう
キックスターターで最近立ち上がった
合成生命体を商材とする初の企画で
夜間に光る植物というものがありました
道路沿いに種を植えて
街灯を一掃するといった趣旨の企画です
先ほども言った通り
遺伝子組み換え作物は
世界を改善したいという動機や
人々を飢餓から救いたいなどの動機ではなく
カネのために推進されています
合成生物学もカネ目当てです
ここで少しユーモアを
[第5位 ロボットの席巻]
今からお話しすることは
信じられないでしょう
20年後にコンピューターは
私たちより賢くなります
ご存じのように
ディープ・ブルーはチェスを
地球上の誰よりもうまくプレイします
ご存じのとおりグーグル・カーは
人間より上手に運転します
[解決法]
「アスタ・ラ・ビスタ(地獄で会おうぜ)」
の時間です
ハイテク産業に目覚めるときです
時代を先取りするには
サイボーグにならねばなりません
(笑)
第4位は多数の火山の噴火です
これは大変な問題です
私たちは変動のない硬い惑星に
住んでいるわけではありません
ほとんどは融けた岩石や鉄で
中心にあると考えられる原子炉が
熱を保っています
私たちは救命ボートに乗って
融けた岩石の上を
漂っているようなものです
地殻は絶えず内部に向かって
崩壊しているので
地表に地球と同じくらい古い石は
見つかりません
地上の種の98%はすでに絶滅しており
火山がその最大の理由です
過去11回起きた大量絶滅のうち
4回は火山が原因です
新しい研究は 三畳紀末に起きた大量絶滅を
火山の噴火と溶岩の流出に結びつけ
別の研究は 生命の95%が絶滅したという
この驚異的な大量絶滅を
ほぼ同時に噴火したという火山帯に
関連づけています
現在のニュージャージー州から
モロッコまで続く火山帯です
過去に地球は何度も開口し
何世紀にもわたり溶岩が流出しました
インドは火山活動の結果造られました
火山活動は空を煤と熱い灰で覆い
あらゆる生物を埋め
いく夏もの間 太陽を覆い隠し
地上の植物や
海のプランクトンは死に絶え
それらが死ねば私たちも死にます
火山はまた 多量の二酸化炭素を放出し
地球を大幅に暖め
急激な温室効果を発生させますが
それは火山と聞いて私たちが想像するものに
反するものです
オランダではほとんどの食物が
温室で人工光により育てられています
24時間ずっとです
私たちにもできます
この講演を準備していたとき
奇妙なことを思いつき
Amazonのページに行って
あるものの値段と品質を確認しました
それはガスマスクです
最も安く購入できる保険と言えます
場所もとりませんし
災難を切り抜けられます
そして最後に 私たちのような惑星に
住むにあたっての究極の問題解決法です
地球は不安定で 永遠には存続しません
45億年後には太陽に吸収され
私たちの種は死滅するでしょう
私たちが太陽系外の惑星を
植民地化しないかぎりは
第3位は急速に進む温室効果
先ほど少しお話ししました
生態系の崩壊という言い方もできます
気温が上昇しているのは事実です
1990年の地球の大気の平均気温は
摂氏14.5度でした
23年後 気温は0.75度上昇しました
氷床コアからわかるかぎり 地球史上
CO2濃度がこれほど
急上昇したことはありません
平均気温が現在より1.25度高い
摂氏16.5度に達すると
気候をコントロールできなくなります
言い換えれば
予測が極めて困難になります
過去に起きた大規模な絶滅には必ず
急速なCO2増加が顕著に見られました
そして現代 かつてないほど急速に
CO2が増加しています
通常 大気は
太陽から得られる熱の1割を放出します
しかし温暖化が進み 水の蒸発が進むと
温暖化の原因となるメタン等のガスの
南北の永久凍土からの放出が進み
ある時点で地球は
温室のように機能するようになり
結果が繰り返し増幅し
最後には火星のようになり
日中の平均気温が
摂氏482度に上ります
同時に私たちは
大規模な絶滅の周期に入っており
向こう25年の間に
ハワイ諸島だけで種の25%が
失われると見られます
私たちは乱獲により海を荒廃させ
水温上昇により
サンゴ礁を死滅させています
アマゾンの熱帯雨林のどこかに
私が「限界木」と呼ぶ木があります
酸素を生み出す木を伐採し続けると
ついにはその限界木に到達し
酸素を生み出す生態系の崩壊が
始まるでしょう
私たちはまだ居眠り運転していますが
地球温暖化は緊急事態です
進行を食い止めるために
向こう10年間でどれほどの
CO2排出を抑制しなければならないか
予測はほぼ不可能です
どの動物を保護し
どれだけの自然を保護するかに
優先順位を付けねばなりません
すべてを救うことはできません
私たちを最も助けてくれる種に絞って
保護する必要があります
[第2位 核戦争の勃発]
興味深いことに
11年前 核は私の視界にすら
入っていませんでした
核戦争が深刻な脅威になるとは
考えもしなかったからです
イランが核兵器を持たないことを
世界の大国が望むのには
正当な理由があります
しかし私たちにはコントロールできない
より大きな理由があります
インドとパキスタンは各々
100以上の核兵器を持っています
核の冬をもたらすのに
十分すぎる数です
それは全人類を死に至らせるでしょう
1947年以来 印パは3回衝突しました
インドは原子力潜水艦を開発しており
どこからでもミサイルを発射できます
これに関しオバマ大統領が述べた見解は
極めて賢明な内容でした
ミサイル迎撃システムには
根強い反対があります
それを使って
自国以外のミサイルをすべて撃墜すれば
高性能のミサイルが
残ってしまうからです
この問題に対する部分的な答えは
ミサイル迎撃技術を
多くの国々と協力して開発し
必要な場所に配備することかもしれません
ミサイル迎撃用ミサイルは
核弾頭ミサイル発射の
30秒後に発射する必要があります
弾頭が落下を始める前に
迎撃するためです
そして第1位が
巨大小惑星との交差です
私のお気に入りのテーマです
(笑)
これまでにお話した中には
私が間違っているものもあり
そのうちいくつかは
起こらないかもしれません
ジャーナリストとしての良心からの
免責宣言といったところです
でもこれだけは
私は間違っていません
心配で夜も眠れないくらいです
そして私の情熱でもあります
まさに今 宇宙のどこか
おそらく火星と木星の間の小惑星帯か
さらに遠くの
海王星の外側にある
巨大なカイパー・ベルトに
私たちに向かってくる
ミサイルがあります
それが軌道から飛び出すのは
明日かも 10万年後かもしれません
しかし その運命は決まっています
地球に衝突するのです
過去に同じことが何度も起こりました
望遠鏡で月を見てみてください
小惑星が衝突した跡だらけです
まもなくスクリーンにも出てきます
地球も小惑星が衝突した跡で
あばただらけです
ただ 地殻が折り重なっているため
その多くが隠され
草木に覆われているというだけです
6,500万年前 巨大な小惑星が
地球全体への衝撃波と火災旋風を起こし
恐竜を滅ぼしました
空は噴出物にびっしり覆われ
最低でも100年 ともすると1,000年は
夏がありませんでした
人類がそのとき存在していれば
滅亡していたでしょう
いくつかの希望もあります
まず 小惑星エロス
これは巨大な岩で
恐竜を滅亡させた小惑星より大きく
火星と木星の間の
小惑星帯を回っていますが
未来のある時点で
火星と交差する 現在の軌道から
地球と交差する軌道へ
シフトするでしょう
やがて地球の軌道とも
交差するでしょう
エロスは恐竜を絶滅させた
小惑星より大きいです
しかしここからが面白いところです
これは2000年に発射された
宇宙探査機から撮った写真です
小惑星を調査するための
NASAの探査機です
この宇宙船はエロスを
周回する軌道に乗りました
宇宙では野球ボールを
人を回る軌道に乗せることもできます
重力の働きのためです
ミッションが終わったとき
若干の燃料と 若干の電気が余っていて
制御装置もあったので
ミッション外ではありましたが
探査機をエロスに
無事着陸させました
それ以来 人類は
深宇宙で秒速32キロで動く
彗星3個に干渉しました
このようなミッションがもたらす影響を
よく考えてみましょう
人類史上初めて
私たちは接近する小惑星に飛び込み
その軌道を変える能力を手にしたのです
ただし その場所がわかり
ロケットを準備できればの話ですが
多くの場合 小惑星はアマチュア天文家が
もう手遅れという時に見つけます
NASAは小惑星帯で地球と
ぶつかりそうな星を探しており
その数はおよそ2万個です
しかもカイパー・ベルトは
遠すぎて観測できません
その中には10万の物体があり
それらは恐竜を滅ぼした小惑星の
10倍の大きさです
たった20年で
私たちは自らの運命を
変える技術を開発しました
小惑星に干渉し
接近を阻止できるのです
いつか皆さんか その子どもか孫か
曾孫が
ある朝目覚め このニュースが
現実となったことを知るでしょう
すなわち『ニューヨーク・タイムズ』紙を
「殺人小惑星が地球と衝突へ」という
見出しが飾るでしょう
私たちに備えがなければ
その後 何が起こるかは
まさに恐怖を超越します
ほとんどの人はその衝撃だけでは
死にませんが
飢餓で死ぬでしょう
それから私たちを守るための保険費用は
B-2爆撃機1機の費用に匹敵します
小惑星の問題は明々白々です
100年近く前 ある物理学者が
「文明には2種類ある
小惑星の衝突から
自らを守れる者たちと
そうでない者たちだ」と言いました
私たちは前者です
躊躇する必要はありません
ありがとうございました
(拍手)