0:00:07.244,0:00:09.364 1960年代にわたり 0:00:09.366,0:00:13.143 FBIは アメリカで最も著名な[br]知性の持ち主の一人に関する調査で 0:00:13.143,0:00:17.246 おそよ2千件もの資料を集めました 0:00:17.246,0:00:21.321 調査対象となった人物は[br]作家のジェイムズ・ボールドウィンです 0:00:21.321,0:00:22.481 当時 0:00:22.487,0:00:25.427 FBIは多くの芸術家や思想家を[br]調査していましたが 0:00:25.427,0:00:29.186 彼らの資料はボールドウィンのものと[br]比べると わずかなものでした 0:00:29.186,0:00:31.536 FBIが彼を追い回していた数年間 0:00:31.536,0:00:35.350 彼は世界で最も売れた[br]黒人作家の一人となりました 0:00:35.350,0:00:38.913 大衆と権力がジェームズ・ボールドウィンの[br]人物像を想像する中 0:00:38.913,0:00:42.105 何が彼に重くのしかかるように[br]なったのでしょうか? 0:00:42.105,0:00:44.022 1924年 ハーレムに生まれ 0:00:44.022,0:00:46.344 9人兄弟姉妹の最年長でした 0:00:46.344,0:00:49.609 14歳で説教師として働き始めました 0:00:49.609,0:00:53.093 教会での説教を通じて 作家に必要な[br]自分の考えを伝える技量を磨きましたが 0:00:53.093,0:00:55.462 それと同時に[br]人種差別や同性愛に対する 0:00:55.462,0:00:59.010 教会の立場と[br]対立するようになりました 0:00:59.010,0:00:59.971 高校卒業後 0:00:59.971,0:01:04.236 雑用の仕事をしながら[br]小説とエッセーを書き始めました 0:01:04.236,0:01:06.605 しかし 教会を離れる[br]原因となった問題は 0:01:06.605,0:01:09.860 日常生活でも[br]避けて通れないものでした 0:01:09.860,0:01:12.674 たびたび 人種差別と[br]同性愛嫌悪に直面し 0:01:12.674,0:01:16.730 怒りや幻滅を感じた彼は[br]自由な人生に憧れていました 0:01:16.730,0:01:20.085 1948年 24歳の時 0:01:20.085,0:01:23.035 作家の特別研究員として[br]パリに移住しました 0:01:23.035,0:01:25.571 フランスから処女作 0:01:25.571,0:01:28.814 『山にのぼりて告げよ』を[br]1953年に出版しました 0:01:28.814,0:01:29.794 ハーレムを舞台に 0:01:29.794,0:01:34.467 教会を抑圧と希望が生まれる[br]源として探求しました 0:01:34.467,0:01:37.322 本は黒人と白人[br]両方に人気がありました 0:01:37.322,0:01:39.235 創作活動で高い評価を得て 0:01:39.235,0:01:43.787 ボールドウィンは人種 階級[br]文化及び亡命についての考察を 0:01:43.787,0:01:48.490 1955年に 『黒人はこう考える』[br]という詳細なエッセー集にまとめました 0:01:48.490,0:01:49.580 その一方で 0:01:49.580,0:01:52.422 アメリカでは [br]公民権運動が勢いを得ていました 0:01:52.422,0:01:56.932 アメリカの黒人は徐々に[br]選挙人登録と投票の機会を得ましたが 0:01:56.932,0:02:01.744 基本的な権利が [br]学校やバス 職場や軍隊では 0:02:01.744,0:02:03.834 まだ認められていませんでした 0:02:03.834,0:02:06.751 残りの人生を 主にパリで[br]過ごしていましたが 0:02:06.751,0:02:09.132 ボールドウィンは[br]公民権運動に深く関わり 0:02:09.132,0:02:12.149 母国の実現されない約束を[br]非常に気にかけていました 0:02:12.149,0:02:15.075 家族や友達 近隣の人々が 0:02:15.075,0:02:18.714 依存症や投獄 自殺に[br]陥るのを見ていました 0:02:18.714,0:02:21.413 彼らの悲運は[br]人種隔離の存在する社会の抑圧が 0:02:21.413,0:02:23.775 生み出したと信じていました 0:02:23.775,0:02:25.075 1963年 0:02:25.075,0:02:27.669 『次は火だ』を出版し 0:02:27.669,0:02:29.883 人種間闘争を 印象的に描写し 0:02:29.883,0:02:32.270 白人系アメリカ人の[br]責任としましたが 0:02:32.270,0:02:33.754 さらに 一歩踏み込んで 0:02:33.754,0:02:36.721 人種差別は白人も[br]傷つけていると主張しました 0:02:36.731,0:02:37.821 彼の視点では 0:02:37.821,0:02:42.048 皆が同じ社会構造の中で[br]密接に絡み合っていたのでした 0:02:42.048,0:02:43.508 彼は長年 こう信じていました 0:02:43.508,0:02:47.447 『人々は歴史に囚われており[br]歴史も人々に閉じ込められているのだ』と 0:02:47.447,0:02:49.317 公民権運動でのボールドウィンの役割は 0:02:49.317,0:02:51.347 観察し 報じるだけでは[br]ありませんでした 0:02:51.347,0:02:53.636 アメリカ南部の各地も訪れ 0:02:53.636,0:02:56.613 集会に参加し 講演も行いました 0:02:56.613,0:02:59.438 白人政治家と黒人運動家の両方と議論し 0:02:59.438,0:03:01.008 その中には マルコムXもいました 0:03:01.008,0:03:04.709 黒人運動家と[br]有識者やロバート・ケネディの様な 0:03:04.709,0:03:07.567 白人支配者階級のリーダー達との[br]間に立つ調整係になりました 0:03:07.567,0:03:09.280 ボールドウィンは 0:03:09.280,0:03:11.747 白人達が快く耳を貸すような方法で 0:03:11.747,0:03:14.627 社会の混乱の原因を明確に述べられる[br]優れた能力を有していたので 0:03:14.627,0:03:18.736 ケネディー達は彼を黒人アメリカ人の[br]代表者として見る様になりました 0:03:18.736,0:03:20.906 ボールドウィンが否定した[br]レッテルです 0:03:20.906,0:03:22.142 同時に 0:03:22.142,0:03:25.852 FBIは彼の鋭い言語能力に[br]脅威を感じるようになりました 0:03:25.852,0:03:27.608 公民権運動の輪の中にいても 0:03:27.608,0:03:29.978 ボールドウィンは[br]部外者と感じることもありました 0:03:29.978,0:03:33.044 それは 自ら海外在住を[br]選択していることに加えて 0:03:33.044,0:03:35.126 同性愛嫌悪が蔓延している時代に 0:03:35.126,0:03:37.897 自身の作品で性的指向を[br]率直に語っていたからでした 0:03:37.897,0:03:39.113 終生 0:03:39.113,0:03:42.012 ボールドウィンは自身の役割を[br]目撃者と捉えていました 0:03:42.012,0:03:43.562 彼の多くの仲間達とは異なり 0:03:43.569,0:03:46.853 いくつかの公民権運動の[br]勝利を見届けましたが 0:03:46.853,0:03:51.333 なおも続くアメリカの人種差別が[br]彼に重くのしかかっていました 0:03:51.333,0:03:53.981 彼は 歴史のその瞬間に囚われた感覚に[br]陥ったかもしれませんが 0:03:53.981,0:03:56.775 彼の言葉は数世代にもわたる[br]人々の心に伝わり 0:03:56.775,0:03:59.475 その上 彼らが 社会の最も複雑な[br]問題の微妙な違いを 0:03:59.475,0:04:02.524 理解できるようにも導きました