WEBVTT

00:00:07.250 --> 00:00:09.202
悪名高い架空のキャラクターである

00:00:09.202 --> 00:00:13.315
キャリー・ホワイトは
高校のダンス会場を炎上させ

00:00:13.315 --> 00:00:15.498
その後 町を恐怖におとしいれます

00:00:15.498 --> 00:00:18.635
この時 彼女が使ったのが「念力」―

00:00:18.635 --> 00:00:24.868
つまり念じるだけで
物を動かす力でした

00:00:24.868 --> 00:00:28.857
映画『キャリー』は小説に基づいた
フィクションに過ぎませんが

00:00:28.857 --> 00:00:32.858
念力を信じる気持ちは
フィクションとは言えません

00:00:32.858 --> 00:00:36.529
何世紀もの間
念力だけで物の動きを

00:00:36.529 --> 00:00:40.712
制御できると主張する人々が
絶えないのです

00:00:40.712 --> 00:00:44.744
空中浮遊や念じてドアを開けること
スプーン曲げなどは

00:00:44.744 --> 00:00:47.237
どれも興味深い例です

00:00:47.237 --> 00:00:51.097
『マトリックス』でネオが
空中の弾丸を止めるのに使い

00:00:51.097 --> 00:00:54.463
ヨーダが極めた技がそれです

00:00:54.463 --> 00:00:56.125
念力は実在するのでしょうか？

00:00:56.125 --> 00:01:00.904
それともキャリーやヨーダやネオのように
フィクションなのでしょうか？

00:01:00.904 --> 00:01:04.304
それを調べるためには
念力が存在するという主張を

00:01:04.304 --> 00:01:08.477
科学的な方法で 科学的な視点から
評価する必要があります

00:01:08.477 --> 00:01:12.286
念力は心霊現象の研究である

00:01:12.286 --> 00:01:15.370
超心理学の一分野です

00:01:15.370 --> 00:01:18.514
超心理学者は自分たちの研究を
科学だと考えていますが

00:01:18.514 --> 00:01:20.974
それを認めない科学者もいます

00:01:20.974 --> 00:01:23.461
では基本的なことから検討しましょう

00:01:23.461 --> 00:01:25.282
検討 その１：

00:01:25.282 --> 00:01:28.620
念力に関する逸話は山ほどありますが

00:01:28.620 --> 00:01:31.569
その科学的証明となるものがありません

00:01:31.569 --> 00:01:34.425
科学的方法に則り
実験室的状況でも再現できる状況で

00:01:34.425 --> 00:01:38.903
念力が本物だと
証明されたことはないのです

00:01:38.903 --> 00:01:43.871
1930年代 超心理学の父と呼ばれる
ジョゼフ・バンクス・ラインは

00:01:43.871 --> 00:01:47.169
人々が念力を使って 思うように

00:01:47.169 --> 00:01:50.474
サイコロを転がせるかどうか
実験しました

00:01:50.474 --> 00:01:53.708
ところが彼以外の科学者は
結果を再現できませんでした

00:01:53.708 --> 00:01:56.386
再現は証明の要ですから

00:01:56.386 --> 00:01:58.237
これは問題でした

00:01:58.237 --> 00:01:59.688
科学者はさておき

00:01:59.688 --> 00:02:02.970
自称「念力の持ち主」は
数え切れないほどたくさんいます

00:02:02.970 --> 00:02:06.347
でも その誰もがペテンを暴かれるか

00:02:06.347 --> 00:02:10.491
思い通りにならない状況だと
念力を見せられませんでした

00:02:10.491 --> 00:02:15.256
おそらく思い通りの結果を出すために
状況を操作していたのでしょう

00:02:15.256 --> 00:02:20.681
現在では 本当に念力のような
超能力を持っていると証明できる人に

00:02:20.681 --> 00:02:26.093
巨額の賞金を出す組織も多くあります

00:02:26.093 --> 00:02:29.024
しかし この賞金を獲得した者は
まだ誰もいません

00:02:29.024 --> 00:02:30.659
検討 その２：

00:02:30.659 --> 00:02:32.401
念力を調査するとき

00:02:32.401 --> 00:02:36.541
何を測定するかは
研究者により様々です

00:02:36.541 --> 00:02:40.026
ヨーダのものと同じ位 強烈な脳波が
働いているのでしょうか？

00:02:40.026 --> 00:02:43.996
研究者の合意がないせいで
どの科学においても

00:02:43.996 --> 00:02:46.759
説を証明する上で必要とされる
研究基準を

00:02:46.759 --> 00:02:49.401
適用することが難しいのです

00:02:49.401 --> 00:02:50.921
検討 その３：

00:02:50.921 --> 00:02:54.025
科学の意味は未知の事を
発見することにあります

00:02:54.025 --> 00:02:56.392
科学的研究史上―

00:02:56.392 --> 00:02:57.806
新たな発見が

00:02:57.806 --> 00:03:01.391
定説に反していたり
時には科学の分野全体を

00:03:01.391 --> 00:03:04.414
覆すことだってあります

00:03:04.414 --> 00:03:07.668
そのような発見は
疑いの目にも耐えられるように

00:03:07.668 --> 00:03:10.135
特に丹念に
検証する必要があります

00:03:10.135 --> 00:03:11.717
念力の場合は

00:03:11.717 --> 00:03:14.270
確立した科学に反しているのに

00:03:14.270 --> 00:03:17.493
それを支持する
強力な証拠に欠けています

00:03:17.493 --> 00:03:21.130
物理法則によって宇宙は操られ
説明が可能になりますが

00:03:21.130 --> 00:03:25.305
その法則の１つによると
脳波で物体は動かせません

00:03:25.305 --> 00:03:28.271
脳波は頭の外にある物に
作用するほど

00:03:28.271 --> 00:03:31.795
強い力はないし
遠くにも届かないからです

00:03:31.795 --> 00:03:35.974
物理学によれば
遠くから物体に作用しうる力は

00:03:35.974 --> 00:03:39.356
磁力と重力だけです

00:03:39.356 --> 00:03:43.280
科学で説明できる
念力に最も近いものは

00:03:43.280 --> 00:03:47.405
思考を使ってロボットアームを
制御することでしょう

00:03:47.405 --> 00:03:50.085
脳卒中で動けなくなった患者の脳の

00:03:50.085 --> 00:03:54.414
運動を制御する領野に
研究者が微細な電極を埋め込んで

00:03:54.414 --> 00:03:58.396
意識を集中してロボットアームを
動かせるよう患者を訓練します

00:03:58.396 --> 00:04:01.800
このアームは患者の意思の
延長となり 動くのです

00:04:01.800 --> 00:04:04.480
すごいことですが
念力ではありません

00:04:04.480 --> 00:04:07.783
患者の思考はぼんやりした
検出できないものではありません

00:04:07.783 --> 00:04:09.607
思考は検出可能な脳の信号で

00:04:09.607 --> 00:04:12.972
変換されワイヤーを通じて
ロボットに伝達されます

00:04:12.972 --> 00:04:16.123
その動きは 科学によって
測定や検査や説明が可能です

00:04:16.123 --> 00:04:20.446
だから このような思考による制御が
現実のものだと言えるのです

00:04:20.446 --> 00:04:22.942
科学とは ある考え方に
肯定的あるいは否定的な証拠を

00:04:22.942 --> 00:04:27.120
地道に積み上げていく
ゆっくりとした過程なのです

00:04:27.120 --> 00:04:28.836
証拠を塔のように積み上げていくと

00:04:28.836 --> 00:04:31.035
どちらが高いかが分かります

00:04:31.035 --> 00:04:35.730
念力の場合 積み上がった証拠は
その存在を示していません

00:04:35.730 --> 00:04:39.858
科学の域内に このような超自然現象は
当てはまらないと言う人もいますが

00:04:39.858 --> 00:04:41.277
それはそれでいいでしょう

00:04:41.277 --> 00:04:45.467
ただそうなると 念力は
単なる個人の信念ということになります

00:04:45.467 --> 00:04:47.758
科学的評価ができなければ

00:04:47.758 --> 00:04:50.584
それは科学的だとは言えません

00:04:50.584 --> 00:04:52.560
ここまで調べて分かったことは

00:04:52.560 --> 00:04:55.713
どんなに私たちが
フォースと共に在りたいと

00:04:55.713 --> 00:04:57.943
思ったとしても

00:04:57.943 --> 00:05:00.922
念力を支持する根拠は
弱いということです

00:05:00.922 --> 00:05:03.021
ネオ キャリー ヨーダ
残念ですね

00:05:03.021 --> 00:05:07.158
あなたたちの能力はすごいけど
今のところは映画の中だけの話ですね