1 00:00:07,293 --> 00:00:12,090 3千年以上前の 古代エジプトの医学書に 2 00:00:12,090 --> 00:00:15,200 ある花が医薬品として登場し始めました 3 00:00:15,200 --> 00:00:17,780 地中海一帯でも 古代ミノア人が 4 00:00:17,780 --> 00:00:21,930 この植物から 陶酔感を得て 使用する方法を発見したようです 5 00:00:21,930 --> 00:00:24,870 どちらの古代文明も ある事実に気付いていたのです ― 6 00:00:24,870 --> 00:00:28,370 ケシの実から採取される 問題の物質「アヘン」 が 7 00:00:28,370 --> 00:00:32,240 快感を生じ 痛みを軽減できる という事実です 8 00:00:32,240 --> 00:00:35,078 以来アヘンは ずっと使用されてきましたが 9 00:00:35,078 --> 00:00:37,233 19世紀になって初めて 10 00:00:37,233 --> 00:00:44,083 その化合物のひとつである「モルヒネ」が 同定され 医療用に単離されました 11 00:00:44,083 --> 00:00:48,300 モルヒネやコデイン その他ケシから直接作られる物質を 12 00:00:48,300 --> 00:00:50,185 「オピエート」と言います 13 00:00:50,185 --> 00:00:55,386 20世紀になると 製薬会社は オピエートに類似した合成物質を 14 00:00:55,386 --> 00:00:57,126 次々と生み出しました 15 00:00:57,126 --> 00:01:02,060 ヘロイン、ヒドロコドン、 オキシコドン、フェンタニルなどです 16 00:01:02,060 --> 00:01:04,820 合成であれ アヘン由来であれ 17 00:01:04,820 --> 00:01:08,581 これらの化合物は 総称して 「オピオイド」として知られています 18 00:01:08,581 --> 00:01:12,911 オピオイド薬は 合成か天然 合法か違法かに関わらず 19 00:01:12,911 --> 00:01:17,548 非常に効果的な鎮痛薬ですが 中毒性が高いのも特徴です 20 00:01:17,548 --> 00:01:19,548 1980年代~90年代には 21 00:01:19,548 --> 00:01:24,711 製薬会社が オピオイド鎮痛薬を 大々的に販売するようになりましたが 22 00:01:24,711 --> 00:01:27,246 医学界と一般の人々に対して 23 00:01:27,246 --> 00:01:30,311 中毒の可能性を 意図的に控えめに伝えていました 24 00:01:30,311 --> 00:01:34,101 オピオイド鎮痛薬の処方数は 急増し 25 00:01:34,101 --> 00:01:40,243 オピオイド依存症のケースも増え 現在もその危機が続いています 26 00:01:40,243 --> 00:01:43,753 オピオイドの中毒性が なぜこんなにも高いかを理解するには 27 00:01:43,753 --> 00:01:49,488 最初の服用から 繰り返し摂取することで 人体にどのような影響を与えるか 28 00:01:49,488 --> 00:01:53,111 また 長期的服用を止めた際に 何が起きるかを 調べるとよいでしょう 29 00:01:53,111 --> 00:01:56,061 これらの薬は それぞれ 微妙に異なる化学的性質を持ちますが 30 00:01:56,061 --> 00:02:02,824 どの薬も 脳内のオピオイド受容体に結合して 体内のオピオイド系に作用します 31 00:02:02,824 --> 00:02:07,645 体内のエンドルフィンも これらの受容体に 結合して 痛みの信号を弱めますが 32 00:02:07,645 --> 00:02:12,226 オピオイド薬は より強く より長く結合するため 33 00:02:12,226 --> 00:02:17,478 エンドルフィンよりも はるかに激しい痛みに 対応できるのです 34 00:02:17,478 --> 00:02:22,940 またオピオイド受容体は 気分や 身体機能など あらゆることに影響を与えます 35 00:02:22,940 --> 00:02:27,050 つまり これらの機能と オピオイドの結合力と耐久性で 36 00:02:27,050 --> 00:02:30,250 体内に備わるシグナル伝達分子よりも 37 00:02:30,250 --> 00:02:34,070 効果が顕著で 広範囲に及ぶわけです 38 00:02:34,070 --> 00:02:38,825 オピオイド薬がオピオイド受容体と結合すると ドーパミンの放出が誘発されます 39 00:02:38,825 --> 00:02:42,265 これは 快楽の感情と結びついており 40 00:02:42,265 --> 00:02:46,630 オピオイドの陶酔感の特徴である 多幸感を担っている可能性があります 41 00:02:46,630 --> 00:02:50,745 同時に オピオイドは ノルアドレナリンの放出を抑制し 42 00:02:50,745 --> 00:02:56,590 不眠、呼吸、消化や血圧に 影響を及ぼします 43 00:02:56,590 --> 00:03:00,920 治療量のオピオイドを摂取すると ノルアドレナリンが減少し 44 00:03:00,920 --> 00:03:03,366 便秘のような副作用が起きます 45 00:03:03,366 --> 00:03:09,184 高用量のオピオイドを摂取すると 心拍や呼吸が危険なレベルにまで低下し 46 00:03:09,184 --> 00:03:12,244 意識喪失や 死に至ることさえあります 47 00:03:13,684 --> 00:03:18,038 やがて体は オピオイドへの耐性を 獲得し始めます 48 00:03:18,038 --> 00:03:21,167 そして オピオイド受容体の数が 減少したり 49 00:03:21,167 --> 00:03:24,103 反応が悪くなることがあります 50 00:03:24,103 --> 00:03:29,031 以前と同様の ドーパミン放出と気分の高揚を得るには 51 00:03:29,031 --> 00:03:32,381 さらに高用量のオピオイドを 摂取し続けしなくてはなりません ― 52 00:03:32,381 --> 00:03:36,143 身体的依存と依存症につながる サイクルの始まりです 53 00:03:36,143 --> 00:03:39,933 耐性を補うために オピオイドを多く摂取すればするほど 54 00:03:39,933 --> 00:03:42,763 基本的な身体機能に 影響を与え得るほどに 55 00:03:42,763 --> 00:03:46,303 ノルアドレナリンのレベルが低下します 56 00:03:46,303 --> 00:03:50,844 体は ノルアドレナリン受容体の 数を増やすことで 57 00:03:50,844 --> 00:03:54,604 より少量のノルアドレナリンを 検出できるよう補います 58 00:03:54,604 --> 00:03:57,213 この ノルアドレナリンへの 感受性の高まりによって 59 00:03:57,213 --> 00:04:00,283 体は正常に機能し続けられるのですが 60 00:04:00,283 --> 00:04:05,289 実際は この新しいバランスを維持するために オピオイドに依存するようになります 61 00:04:05,289 --> 00:04:10,454 オピオイドに身体的に依存している人が 急に服用を止めると 62 00:04:10,454 --> 00:04:12,524 そのバランスが崩れます 63 00:04:12,524 --> 00:04:17,258 オピオイド使用を止めて1日以内に ノルアドレナリンのレベルが上昇します 64 00:04:17,258 --> 00:04:20,651 しかし 体内に作られた 余分なノルアドレナリン受容体が 65 00:04:20,651 --> 00:04:22,928 除去されるのには 時間がかかります 66 00:04:22,928 --> 00:04:24,848 このことは 体がノルアドレナリンに 過敏になる期間があることを意味します 67 00:04:24,848 --> 00:04:28,078 このことは 体がノルアドレナリンに 過敏になる期間があることを意味します 68 00:04:28,078 --> 00:04:29,748 この過敏症が 69 00:04:29,748 --> 00:04:35,368 筋肉痛、腹痛、発熱、嘔吐などの 離脱症状を引き起こします 70 00:04:35,368 --> 00:04:39,999 一時的にですが オピオイドの離脱症状は 驚くほど身体を衰弱させることがあります 71 00:04:39,999 --> 00:04:42,489 離脱症状の深刻なケースでは 72 00:04:42,489 --> 00:04:46,688 何日も 時には 何週間も 激しい嘔吐に襲われることがあります 73 00:04:46,688 --> 00:04:50,358 オピオイド依存症の人が 薬を使ってしまうのは 74 00:04:50,358 --> 00:04:54,328 もはやハイになるためではなく むしろ気分が悪くならないようにです 75 00:04:54,328 --> 00:04:58,148 多くの人は 離脱期間中に 給料や仕事までも失うリスクがあったり 76 00:04:58,148 --> 00:05:02,208 世話をしてくれる人が いなかったりします 77 00:05:02,208 --> 00:05:05,123 もし 後にオピオイドを再摂取すれば 78 00:05:05,123 --> 00:05:08,258 過剰摂取のリスクが 格段に高まる可能性があります 79 00:05:08,258 --> 00:05:12,258 なぜなら 耐性が高い期間に 標準的だった用量が 80 00:05:12,258 --> 00:05:14,448 今や 致命的となりうるからです 81 00:05:14,448 --> 00:05:18,368 1980年以降 オピオイドの過剰摂取による事故死が 82 00:05:18,368 --> 00:05:21,388 アメリカで指数関数的に増加し 83 00:05:21,388 --> 00:05:25,368 オピオイド依存症も 世界中で激増しました 84 00:05:25,368 --> 00:05:29,529 オピオイド鎮痛薬の処方が 厳しく規制されつつある一方で 85 00:05:29,529 --> 00:05:32,899 若年層を中心に 過剰摂取や依存症が なおも増加しています 86 00:05:32,899 --> 00:05:35,639 若年層を中心に 過剰摂取や依存症が なおも増加しています 87 00:05:35,639 --> 00:05:39,884 依存症の初期の症例の多くは 中高年の人たちで 88 00:05:39,884 --> 00:05:42,209 処方されたり 友人や家族にもらった鎮痛薬で 中毒になりました 89 00:05:42,209 --> 00:05:45,619 処方されたり 友人や家族にもらった鎮痛薬で 中毒になりました 90 00:05:45,619 --> 00:05:50,997 こんにちも 多くの場合 若者は 同様に 処方箋オピオイドを手にしますが 91 00:05:50,997 --> 00:05:55,884 ヘロインや より安価で入手しやすい 違法な合成オピオイドに 92 00:05:55,884 --> 00:05:58,094 乗り換えます 93 00:05:58,094 --> 00:06:00,949 オピオイド鎮痛薬の 規制強化の他に 94 00:06:00,949 --> 00:06:05,540 依存症や過剰摂取の増加を逆転させるには どうすればよいでしょうか? 95 00:06:05,540 --> 00:06:10,425 今のところ「ナロキソン」と呼ばれる薬が 過剰摂取を防ぐ最善の手段です 96 00:06:10,425 --> 00:06:15,101 ナロキソンは オピオイド受容体に 結合しますが 活性化せず 97 00:06:15,101 --> 00:06:18,151 他のオピオイドが受容体と結合するのを 阻止します 98 00:06:18,151 --> 00:06:22,839 また 過剰摂取を逆転させるために受容体から オピオイドを遮断することさえあります 99 00:06:22,839 --> 00:06:26,109 オピオイド依存症が 単独の病気であることはほとんどなく 100 00:06:26,109 --> 00:06:28,966 多くの場合 オピオイド依存症の人たちは 101 00:06:28,966 --> 00:06:30,936 精神の病にも 悩まされています 102 00:06:30,936 --> 00:06:35,739 オピオイド依存症の治療には 薬物治療 医療サービス、心理療法を組み合わせた 103 00:06:35,739 --> 00:06:38,266 入院プログラムと 外来プログラムが あります 104 00:06:38,266 --> 00:06:41,026 しかし これらのプログラムの多くは 非常に料金が高く 105 00:06:41,026 --> 00:06:44,277 より手頃な選択肢には 長い待ちが発生しています 106 00:06:44,277 --> 00:06:46,767 また 治療を始める前に 107 00:06:46,767 --> 00:06:50,927 オピオイドからの完全な解毒が 必要とされることも多いです 108 00:06:50,927 --> 00:06:55,167 離脱期間中に 仕事や住居を失うリスクがある人には 109 00:06:55,167 --> 00:07:00,752 離脱期間に入ることも 施設での数ヶ月間の滞在治療も 不可能です 110 00:07:00,752 --> 00:07:04,732 オピオイド維持療法プログラムは これらの問題のいくつかに対処し 111 00:07:04,732 --> 00:07:08,022 薬物治療と行動療法を 組み合わせて 112 00:07:08,022 --> 00:07:10,987 オピオイドの乱用を根絶することを 目的としています 113 00:07:10,987 --> 00:07:15,247 オピオイド維持療法プログラムで 離脱症状の回避に使用される薬は 114 00:07:15,247 --> 00:07:18,237 オピオイド受容体に結合しますが 115 00:07:18,237 --> 00:07:23,552 鎮痛剤やヘロイン 他の一般的に乱用される オピオイドとは違い 向精神作用はありません 116 00:07:23,552 --> 00:07:26,492 こんにち利用可能な オピオイド維持療法の主要な薬は 117 00:07:26,492 --> 00:07:29,101 メタドンと ブプレノルフィンですが 118 00:07:29,101 --> 00:07:32,161 医師がこれらの薬を処方するには 特別な適用免除が必要です ― 119 00:07:32,161 --> 00:07:34,911 オピオイド鎮痛薬の処方には 120 00:07:34,911 --> 00:07:38,001 特別な訓練や証明書は必要ない にもかかわらずです 121 00:07:38,001 --> 00:07:40,201 ブプレノルフィンは とても不足しており 122 00:07:40,201 --> 00:07:43,481 闇市場での取引さえ活発化しています 123 00:07:43,481 --> 00:07:46,621 オピオイド依存症との闘いは まだ長い道のりですが 124 00:07:46,621 --> 00:07:50,581 治療の選択肢への理解を深める 豊富な情報源があります 125 00:07:50,581 --> 00:07:55,040 あなたや あなたの知り合いが アメリカで オピオイド依存に困っているなら 126 00:07:55,040 --> 00:07:58,510 保健福祉省が運営する ヘルプラインにご相談ください 127 00:07:58,510 --> 00:08:02,446 電話番号は 800-662-4357 です 128 00:08:02,446 --> 00:08:07,596 アメリカの1万4千以上の薬物乱用治療施設は こちらのデータベースから検索可能です 129 00:08:07,596 --> 00:08:12,476 www.hhs.gov/opioids