639年続く演奏を体験！ジョン・ケージのOrgan²/ASLSP

ドイツ中部の都市には特別な経験をできる場所があります。

それでは639年続けられる楽曲の演奏の鑑賞です。

それが行われているのは、人口4万人ほどの地方都市ハルバーシュタットです。

ハルバーシュタットはザクセンアンハルト州の都市の一つです。

ベルリンからは鉄道で3時間ほどで訪れることができます。

そのためベルリンから日帰り旅行でも訪れられるでしょう。

ただしハルバーシュタットは観光地ではありません。

街の一番の見どころとなるのは639年続く演奏です。

そのため周辺の観光地であるハルツ山地の街、

ヴェロニケローデやゴスラーと組み合わせて訪れると良いかもしれません。

639年続く演奏が行われているのは、

旧市街にあるかつての教会と旧市街にあるかつての教会として使われていた建物です。

天井が外されて、梁が剥き出しと背の高い空間には音が響き渡っています。

それは音楽というよりも音であり、一つの音が延々と鳴り響いているのです。

この楽曲を作曲したのは、現代音楽家のジョン・ケージです。

ケージは20世紀のアメリカの音楽家で、前衛的な音楽で知られています。

最も有名な楽曲は、おそらく「4分33秒」でしょう。

それは演奏者と指揮者が、4分33秒間、演奏を行わない楽曲なのです。

そこでは、楽器から音がでない無音の状態になります。

しかし、演奏者の出す物音や、会場で出るくしゃみや咳きなどを聴くことになるのです。

そんなジョン・ケージが作曲したのは「ORGAN2/ASLSP (As Slow as Possible)」でした。

「As Slow as Possible 」とは「 可能な限り遅く」という意味です。

これは演奏者が演奏時間を自由に決めることができるのです。

そこで639年という時間が選ばれ、ここハルバーシュタットで演奏されているのです。

そんな長期にわたって行われる演奏に使われているのは特別な楽器です。

楽器はこの楽曲のために作成されたもので、空気を送り込むことで音を出しています。

音は重りで調節されており、その重さを変えることで変えることができます。

音が変わるのは半年から数年に1回で、非常にゆっくりと音楽を奏でているのです。

演奏に使われる楽器の反対に設置されているのは、空気を送り続ける装置です。

この装置によって安定して空気が送り込まれているため、639年という演奏が、

理論的に可能となっているのです。

そもそも、なぜ639年演奏を続け、ハルバーシュタットで演奏するのか、

気になった人もいるでしょう。

その理由は、この街にある大聖堂にあるのです。

ハルバーシュタットの大聖堂には、現代的な音階を持つものでは最古のパイプオルガン設置されていました。

当初演奏は2000年に開始されることが予定されており、

それは歴史的なパイプオルガンの設置から639年後のことだったのです。

最終的に演奏開始は1年遅れ、2001年に演奏が始まり、2640年に演奏を終える予定となっています。

ちなみに、演奏会場となる建物には、2640年までの年数のプレートが設置されています。