< Return to Video

歴史を書きなおした皇女 ― レオノーラ・ネビル

  • 0:07 - 0:09
    アレクシオス・コムネノス
  • 0:09 - 0:10
    このビザンツ皇帝は
  • 0:10 - 0:13
    軍を率いて スキタイの大群と
  • 0:13 - 0:14
    剣を交えました
  • 0:14 - 0:15
    この時 彼は幸運を願って
  • 0:15 - 0:17
    キリスト教で
    最も神聖な聖遺物の1つを
  • 0:17 - 0:18
    携えていました
  • 0:18 - 0:20
    聖母マリアの
  • 0:20 - 0:22
    ベールです
  • 0:22 - 0:24
    しかし 残念なことに
    ご利益はありませんでした
  • 0:24 - 0:26
    彼の軍は負けてしまい
  • 0:26 - 0:27
    しかも 退却の道すがら
  • 0:27 - 0:30
    皇帝は臀部を
    刺されてしまったのです
  • 0:30 - 0:33
    更に困ったことに
    強い風に吹かれ
  • 0:33 - 0:35
    聖遺物が重く感じられたために
  • 0:35 - 0:37
    彼は逃げる途中で茂みに隠し
  • 0:37 - 0:38
    置いていってしまいました
  • 0:38 - 0:39
    それでも彼は 逃げながら
  • 0:39 - 0:42
    スキタイ人を何人か殺しおおせ
  • 0:42 - 0:44
    同時に 彼の仲間を数人か
    助けることに成功しました
  • 0:44 - 0:47
    とはいえ これは
    アレクシオスの娘 アンナが
  • 0:47 - 0:49
    この戦から
    ほぼ60年も経った後に
  • 0:49 - 0:52
    書き記した物語によれば
    の話です
  • 0:52 - 0:55
    彼女は 長い人生の
    最後の10年を費やして
  • 0:55 - 0:57
    500ページにも渡る
  • 0:57 - 1:00
    父の治世を記した歴史書
    『アレクシアス』を書き上げました
  • 1:00 - 1:02
    ギリシア語で書かれた
    『アレクシアス』は
  • 1:02 - 1:04
    古代ギリシアの叙事詩や
  • 1:04 - 1:05
    歴史書の形式を
    模したものでした
  • 1:05 - 1:08
    しかし アンナは
    古代の作家たちとはまた異なる
  • 1:08 - 1:10
    より手際のいる課題に
    直面しました
  • 1:10 - 1:11
    自らの親族を題材に
  • 1:11 - 1:13
    歴史書を執筆する皇女として
  • 1:13 - 1:15
    彼女は 親族への忠誠と
  • 1:15 - 1:16
    起こった出来事を
  • 1:16 - 1:19
    正確に記す義務とを
    天秤にかける必要があり
  • 1:19 - 1:21
    例えば アレクシオスの
    臀部への一撃といった
  • 1:21 - 1:24
    恥ずかしい出来事も
    巧みに記述する必要がありました
  • 1:24 - 1:26
    生涯にわたる勉学と
  • 1:26 - 1:27
    父の統治への参加が
  • 1:27 - 1:30
    この難題を引き受ける
    格好の準備となりました
  • 1:30 - 1:33
    アンナは1083年に生まれました
  • 1:33 - 1:35
    約10年続いた
    残酷な内戦と反乱の末に
  • 1:35 - 1:36
    アンナの父が
  • 1:36 - 1:39
    ローマ帝国の支配権を獲得した
  • 1:39 - 1:41
    その直後のことです
  • 1:41 - 1:42
    彼が権力の座に就いた当初
  • 1:42 - 1:44
    帝国は衰亡の極みにあり
  • 1:44 - 1:46
    外敵の脅威を
    全方面から受けていました
  • 1:46 - 1:48
    東にはテュルク系の
    セルジューク朝が
  • 1:48 - 1:50
    西にはノルマン人が
  • 1:50 - 1:52
    北にはスキタイ人の
    襲撃集団が控えていました
  • 1:52 - 1:54
    アンナの幼少期と
  • 1:54 - 1:55
    青年期を通じ
  • 1:55 - 1:58
    アレクシオスは止むことのない
    軍事作戦を指揮し
  • 1:58 - 2:00
    帝国の国境を守るために
  • 2:00 - 2:02
    十字軍との不安を抱えた同盟を
  • 2:02 - 2:04
    結ぶという決断すらしてきました
  • 2:04 - 2:07
    その頃 コンスタンチノープルにいる
  • 2:07 - 2:09
    アンナもまた 戦っていました
  • 2:09 - 2:11
    彼女は ビザンツ帝国の皇女として
  • 2:11 - 2:12
    相応しいとされる
  • 2:12 - 2:14
    社交儀礼や聖書などの科目を
  • 2:14 - 2:16
    学ぶことを期待されていましたが
  • 2:16 - 2:18
    彼女が興味を示した分野は
  • 2:18 - 2:19
    ギリシア神話や哲学でした
  • 2:19 - 2:21
    神話や哲学の資料を読むため
  • 2:21 - 2:24
    彼女は夜中にこっそりと
    古代ギリシア語の
  • 2:24 - 2:26
    読み方や話し方を
    学ばねばなりませんでした
  • 2:26 - 2:28
    ついにアンナの両親は
  • 2:28 - 2:29
    彼女の真剣さに気付き
  • 2:29 - 2:31
    家庭教師をつけました
  • 2:31 - 2:33
    アンナは学習の手を広げ
  • 2:33 - 2:35
    古典文学や修辞学
  • 2:35 - 2:38
    歴史 哲学 数学
  • 2:38 - 2:40
    天文学や医学を学びました
  • 2:40 - 2:42
    アリストテレスの評釈について
  • 2:42 - 2:43
    アンナが延々質問するため
  • 2:43 - 2:45
    目が疲れてしまったと
  • 2:45 - 2:47
    こぼす学者すらいました
  • 2:47 - 2:48
    15歳の時
  • 2:48 - 2:51
    アンナはニケフォロス・
    ブリュエンニオスと結婚しました
  • 2:51 - 2:52
    両家系の間に古くからあった
  • 2:52 - 2:53
    争いごとを収め
  • 2:53 - 2:56
    アレクシオスの治世を
    強化するためでした
  • 2:56 - 2:59
    幸運なことに
    アンナとニケフォロスは
  • 2:59 - 3:01
    様々な知的興味を
    共有する仲となり
  • 3:01 - 3:02
    当時の気鋭の学者を集めては
  • 3:02 - 3:05
    討論を行なっていました
  • 3:05 - 3:08
    その頃 アレクシオスの軍事行動に
  • 3:08 - 3:09
    結果が伴い始めました
  • 3:09 - 3:11
    帝国が失った領土の多くを
  • 3:11 - 3:13
    取り戻すことに成功したのです
  • 3:13 - 3:14
    父が老いるにつれ
  • 3:14 - 3:16
    アンナは夫と一緒に
  • 3:16 - 3:18
    両親の統治の任務を
    助けるようになりました
  • 3:18 - 3:20
    この間
  • 3:20 - 3:21
    伝えるところによると
    アンナは
  • 3:21 - 3:23
    国家権力と争っている人々に対し
  • 3:23 - 3:25
    正当な扱いをするよう
    求めていたそうです
  • 3:25 - 3:27
    アレクシオスの没後
  • 3:27 - 3:30
    アンナの弟ヨハネスが
    権力の座に就くと
  • 3:30 - 3:31
    アンナは哲学と学術の道に
  • 3:31 - 3:33
    戻っていきました
  • 3:33 - 3:35
    アンナの夫は歴史書を書き
  • 3:35 - 3:37
    彼の祖父の方が
    アレクシオスよりも
  • 3:37 - 3:39
    いい皇帝になれた筈だと
    主張しましたが
  • 3:39 - 3:41
    アンナはこれに異論を唱え
  • 3:41 - 3:43
    皇帝としての父の功績を考察するため
  • 3:43 - 3:45
    『アレクシアス』の執筆に
  • 3:45 - 3:47
    取り掛かりました
  • 3:47 - 3:49
    11世紀後半から
    12世紀前半にかけての
  • 3:49 - 3:51
    ビザンツ帝国を舞台とした
  • 3:51 - 3:53
    『アレクシアス』は
  • 3:53 - 3:56
    アレクシオスの治世の間の動乱と
  • 3:56 - 3:59
    動乱に対するアンナ自身の反応 ―
  • 3:59 - 4:01
    彼女の両親と夫の死を思い
  • 4:01 - 4:04
    わっと泣き出したことなどが
    描かれています
  • 4:04 - 4:06
    このような感情的な一節を
    記した背景には
  • 4:06 - 4:08
    女性は戦闘や帝国などについて
  • 4:08 - 4:10
    物を書いてはいけない
    ということが
  • 4:10 - 4:11
    常識となっている社会で
  • 4:11 - 4:14
    より読んでもらおうとの
    期待があったのかもしれません
  • 4:14 - 4:15
    父の治世に高評価を
    下している点で
  • 4:15 - 4:17
    彼女の父への忠誠は
    明らかである一方で
  • 4:17 - 4:20
    様々な出来事に関して
    批判や彼女自身の考えを
  • 4:20 - 4:22
    含めることも忘れませんでした
  • 4:22 - 4:24
    アンナの没後
    彼女の『アレクシアス』は
  • 4:24 - 4:27
    何世紀にもわたって
    写本され続け
  • 4:27 - 4:29
    今日に至るまで
    アレクシオスの治世の
  • 4:29 - 4:30
    同時代的な証言として
  • 4:30 - 4:32
    重要な価値を持ち続けています
  • 4:32 - 4:35
    そして 叙事詩のような
  • 4:35 - 4:36
    歴史的記述によって
  • 4:36 - 4:39
    アンナ・コムネナ自身の名を
    歴史に残したのです
Title:
歴史を書きなおした皇女 ― レオノーラ・ネビル
Speaker:
レオノーラ・ネビル
Description:

ビザンツ帝国の皇帝アレクシオスの娘、アンナ・コムネナは、人生の最後の10年を費やして、父の治世の歴史を描いた500ページの書物『アレクシアス』を執筆しました。自らの親族を題材に執筆する皇女として、彼女は親族への忠誠と、起こった出来事を正確に記す義務とを天秤にかけねばなりませんでした。この叙事詩のような歴史的記述について、レオノーラ・ネビルが明らかにします。

講師:レオノーラ・ネビル、監督:エルス・デカルウェ
このビデオの教材:https://ed.ted.com/lessons/the-princess-who-rewrote-history-leonora-neville

more » « less
Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TED-Ed
Duration:
04:55

Japanese subtitles

Revisions