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脳の実行機能を高める方法

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    打ち明けますが
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    私は最近ようやく
    車の運転を覚えました
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    とても大変でした
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    脳が老化したせいではありません
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    初めて運転を習った時
    どんなだったか覚えていますか?
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    やることのすべてが意識的で
    意図的だったことでしょう
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    私の場合 教習から帰宅すると
    精神的に疲労困憊していました
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    認知科学者の立場からすると
    その理由は明白で
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    脳の「実行機能」を
    たくさん使ったからです
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    実行機能は私たちの持つ
    驚くべき能力で
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    自分の思考や感情や行動を
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    意識的に制御することで
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    「自動車の運転を覚える」といった
    目的を達成します
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    習慣を断ち切ったり
    衝動を抑制したり
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    計画を立てたりしなければ
    いけない時に使います
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    しかし 一番はっきりわかるのは
    何かおかしなことになった時です
  • 0:53 - 0:57
    間違ってシリアルにオレンジジュースを
    かけてしまったことはありませんか?
  • 0:57 - 0:59
    (笑)
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    あるいはフェイスブックを見始めて
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    打合せを忘れていたことに
    ふと気づくとか?
  • 1:03 - 1:04
    (笑)
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    もっとよくありそうなのでは
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    仕事帰りに ある店に寄る
    つもりでいたのに
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    何も考えずに いつも通り
    まっすぐ帰宅してしまうとか?
  • 1:12 - 1:14
    (笑)
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    そんなことは誰にも経験があります
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    うっかりしていたなどと言いますが
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    実際に起きているのは
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    実行機能が働かなかった
    ということです
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    毎日の生活のあらゆる場面で
    実行機能は使われているのです
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    過去30年にわたる研究で
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    実行機能の水準が 幼年期以降の
    様々な良いことの
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    予兆になることが分かりました
  • 1:36 - 1:40
    社交能力や 学業成績
    精神的 身体的な健康
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    収入 貯蓄
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    犯罪を犯さないことまで
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    すごいですよね?
  • 1:46 - 1:48
    ですので私のような研究者が
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    実行機能を理解し 良くする方法を
    探りたいと思うのに
  • 1:51 - 1:54
    なんの不思議もないでしょう
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    最近では自己啓発の分野で
    実行機能がすごい流行語になっています
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    脳トレiPhoneアプリや
    コンピュータゲームや
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    チェスなどを使い
    特定の方法で練習することで
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    実行機能は高められるのだと
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    また研究者たちは
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    実行機能や
    知能などの関連能力が
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    実験室内で鍛えられないものか
    試みています
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    でも私に言わせると
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    このような実行機能の考え方は
    すべて間違っています
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    脳トレは 広い意味での実行機能を
    高めはしません
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    なぜなら脳トレは実行機能の
    限られた部分を訓練するだけで
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    私たちが実行機能を使う
    現実世界の状況とは隔たたりがあるためです
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    スマホの実行機能訓練アプリは
    習得できたとしても
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    週に2回 オレンジジュースを
    シリアルにかけ続けることでしょう
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    (笑)
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    もし実生活において
    意味があるような形で
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    実行機能を向上させたいのなら
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    それが状況にどう影響されるかを
    理解する必要があります
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    どういうことか説明しましょう
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    幼児の実行機能を
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    実験室で測定する
    素晴らしい試験に
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    「次元変化カード分類課題」(DCCS) があります
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    この課題では 幼児はある規則によって
    カードを仕分けていきます
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    例えば形です
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    慣れるまで
    それを何度も繰り返します
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    次に 同じカードを
    違う方法で仕分けるよう
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    指示されます
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    例えば色です
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    幼児はこの作業に苦戦します
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    3歳とか4歳の幼児は
    どう仕分けるかを何度教えても
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    以前の方法で
    仕分け続けるのです
  • 3:30 - 3:33
    [映像](女性)青ならここに入れて
    赤ならこちらに入れてね
  • 3:33 - 3:35
    はい 青ですよ
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    上手ね じゃあ次は
    別のゲームをしましょうね
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    色分けのゲームは
    もうおしまいにします
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    今度は形分けのゲームをしましょうね
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    形分けゲームでは
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    星の形ならここに入れて
    トラックならこちらに入れてね いい?
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    星はこっち トラックはこっち
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    星はどちらに行くのかな?
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    トラックはどっちかな?
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    そう その通り
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    星はこっち トラックはこっちね
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    じゃあトラックよ
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    (笑)
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    星はこっち トラックはこっちよ
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    はい 星よ
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    (笑)
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    (サビーン)抜け出せないんです
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    あの女の子が実行機能を
    活用できていないのは明白です
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    重要な点は
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    この課題について
    あの子を訓練すれば
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    最終的には改善されるでしょうが
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    それで実験室の外でも
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    実行機能が改善されるかと言うと
  • 4:24 - 4:28
    答えはノーで 現実世界では
    色と形を切り替えるより
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    ずっと複雑なことに 実行機能を
    使わなければなりません
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    足し算から 掛け算に切り替える
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    遊びから お片付けに切り替える
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    自分の気持ちでなく 友達のことを考えるよう
    切り替えるという具合に
  • 4:40 - 4:44
    そして現実世界での成功は
    どれくらいやる気があるかとか
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    仲間がどうしているか
    といったことにも依存します
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    また特定の状況下で
    実行機能を使う際に取る戦略も
  • 4:51 - 4:54
    成否に影響します
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    ですので状況が重要であることを
    強調したいのです
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    私の研究から1例を挙げましょう
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    最近私は 子供たちの集団に対して
    古典的なマシュマロ実験を行いました
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    「満足遅延耐性」を測定する実験で
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    多くの実行機能を必要とするだろう
    とされているものです
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    この試験をご存知かも知れませんが
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    基本的に子どもは選択肢を与えられます
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    今すぐ1個のマシュマロをもらうか
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    私が別の部屋にマシュマロを
    取りに行っている間 待っていて
  • 5:23 - 5:25
    マシュマロを2個もらうか
    という選択です
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    ほとんどの子どもは
    2個目のマシュマロも欲しいのですが
  • 5:29 - 5:33
    重要なポイントは
    「どのくらい待てるのか」です
  • 5:33 - 5:34
    (笑)
  • 5:34 - 5:38
    状況の影響を見るために
    私は一捻り加えました
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    「あなたはグループの一員よ」と
    教えるんです
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    例えば緑グループとか
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    緑のTシャツを
    着させさえしました
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    そして言います「あなたの緑グループは
    みんなマシュマロを2個もらうまで待ったのよ
  • 5:51 - 5:53
    でもオレンジグループの子たちは
  • 5:53 - 5:54
    待たなかったの」
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    あるいは 逆のことを言います
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    「あなたのグループは
    マシュマロ2個もらうまで待たなかったけど
  • 5:59 - 6:00
    別のグループは待ったの」
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    そして子どもを1人にして 部屋に残し
  • 6:02 - 6:05
    ウェブカメラを通して
    どのくらい待てるかを観察しました
  • 6:06 - 6:10
    (笑)
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    その実験で分かったのは
  • 6:12 - 6:16
    自分はマシュマロ2個のグループだと
    思っている子どものほうが
  • 6:16 - 6:19
    待つ傾向が強いということです
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    つまり会ったこともないグループの仲間に
    影響を受けていたのです
  • 6:25 - 6:26
    (笑)
  • 6:26 - 6:28
    すごいですよね?
  • 6:28 - 6:31
    この結果を見ても
    まだ分からないことがありました
  • 6:31 - 6:35
    ただ自分のグループに倣ったのか
    あるいはそれより深い何かがあるのか?
  • 6:35 - 6:37
    さらに子どもたちを
    何人か連れてきて
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    マシュマロ実験の後に
    子ども2人の写真を見せて
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    こう言いました「1人の子は
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    クッキーとかシールとか
    物をすぐにもらいたがるけど
  • 6:48 - 6:49
    もう1人の子は
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    もっともらえるよう
    待とうと思うの」
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    そしてこう質問します
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    「どっちの子のほうが好き?
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    いっしょに遊ぶならどっち?」
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    この実験から 自分が待つグループだと
    思っている子どもは
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    待つ方の子を好む傾向があると
    分かりました
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    自分のグループの行動を知ったことで
    待つことを高く評価するようになったのです
  • 7:11 - 7:13
    それだけではなく
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    そのような子どもたちは
    実行機能を用いて
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    待てるようにする作戦を
    生み出す傾向がありました
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    例えば手をお尻の下に敷いたり
    マシュマロからそっぽを向いたり
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    歌ったりして
    自分の気を紛らわしたのです
  • 7:25 - 7:26
    (笑)
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    これらのすべては
    状況の重要性を示しています
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    子どもが持つ実行機能の
    優劣の問題ではありません
  • 7:36 - 7:39
    実行機能を上手く使えるように
    状況が手助けしたのです
  • 7:40 - 7:44
    これは皆さんやお子さんには
    どんな意味があるのでしょうか?
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    たとえばスペイン語を
    習いたいなら
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    自分の状況を変えるため
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    習い事をしたい人達の中に
    身を置くと良く
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    好きな人達だったら
    さらに良いでしょう
  • 7:56 - 8:00
    実行機能を用いる動機が
    より高まります
  • 8:00 - 8:04
    あるいは子どもが算数の宿題をするよう
    手助けしたいのなら
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    その状況で子どもが
    実行機能を使うための戦略を
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    教えることができます
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    例えば勉強を始める前に
    スマートフォンをしまうとか
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    1時間勉強したら
    自分にご褒美をあげるとか
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    状況が全てだなんて
    言うつもりはありません
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    実行機能はとても複雑で
    多くの要素によって形作られるのです
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    でも心に留めてほしいのは
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    自分の人生の何かの面における
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    実行機能を向上させたいなら
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    その場しのぎにしないことです
  • 8:34 - 8:35
    状況をよく考えて
  • 8:35 - 8:38
    どうすれば目指すゴールが
    より重要に感じられるか
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    その特定の状況で
    自分の助けになる
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    どんな戦略が使えるかを
    考えるのです
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    古代ギリシャの人が「汝自身を知れ」と
    言ったのは まさにそれです
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    重要なのは
    状況がいかに行動に影響するかを知り
  • 8:53 - 8:57
    改善のためにその知識が
    どう使えるかを知ることなんです
  • 8:57 - 8:58
    ありがとうございました
  • 8:58 - 9:01
    (拍手)
Title:
脳の実行機能を高める方法
Speaker:
サビーン・ドーベル
Description:

皆さんは毎日、注意を払ったり、計画を立てたり、衝動を抑えたりするときに、脳の実行機能を使っています。その機能をもっと良くすることはできるのでしょうか?認知科学者のサビーン・ドーベルが子どもの発達に関する自身の研究を取り上げ、実行機能に影響を与える要因を探り、悪い習慣を絶ったり目標を達成するためにそれがどう使えるかを解説します。

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English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
09:15

Japanese subtitles

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